公開日:
補聴器の購入には、国民健康保険や社会保険といった公的保険が適用されるのではないかと考える方もいますが、原則として補聴器は保険適用の対象外です。
ただし、一定の条件を満たす場合は、障害者総合支援法による給付や自治体独自の高齢者向け助成制度、医療費控除を活用することで費用負担を軽減できる可能性があります。
この記事では、補聴器購入に保険が適用されるのか、利用できる助成制度や医療費控除、さらに補聴器の紛失保証についてわかりやすくご説明します。
補聴器の購入に保険は適用される?

補聴器購入には、国民健康保険や社会保険、介護保険といった公的保険は適用されません。
医療機器の中には、ペースメーカーや人工関節のように保険適用となるものもありますが、補聴器は制度上、保険の適用外です。
その理由は、補聴器が病気を治療するための機器ではなく「聞こえを補助し、日常生活の質を高めるための補助機器」として位置づけられているためです。
公的医療保険は、病気やけがの治療に必要な最小限の医療行為や医療機器を対象としているため、補聴器の購入費用は原則として保険給付の対象にはならないことを理解しておきましょう。
補聴器購入で利用できる給付・助成制度とは

補聴器の購入に保険は適用されませんが、条件を満たす場合は、公的制度を利用して費用の一部を公費負担してもらえる場合があります。
代表的な制度として、身体障害者手帳の交付を受けている方が利用できる補装具費支給制度や自治体が独自に実施している高齢者向けの補聴器購入費用助成制度などがあります。
身体障害者手帳の対象となる場合の給付制度とは
高度または重度の聴覚障害があり身体障害者手帳交付を受けている場合には、障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度を利用できる場合があります。
この制度では、補聴器が必要な補装具として認められた場合に、購入費用の一部が公費で支給されます。原則として自己負担は基準額の1割となるため、金額的な負担を抑えて補聴器を購入することが可能です。
障害者総合支援法と補装具費支給制度とは
障害者総合支援法とは、障害のある方が自立した日常生活や社会生活を送る権利を保障し、必要な福祉サービスを提供することで総合的に支援するための法律です。
この法律に基づいて、補装具費支給制度など様々な支援制度が設けられています。
補装具とは、障害がある方の身体機能を補い、日常生活を支援するために長期間使用される福祉用具を指します。聴覚障害者の場合は、補聴器が代表的な補装具にあたります。
補装具費支給制度は、補装具の購入費用の一部を公費で支給する制度で、対象となる場合は基準額の1割の自己負担で購入することができます。
ただし、所得制限が設けられているため、世帯の所得状況によっては制度を利用できないケースがあります。利用を検討する際には、対象になるか事前に確認しましょう。
▼参考:補装具費支給制度の概要|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yogu/hosouguhisikyuuseido.html
補聴器の購入基準額について
補聴器にはさまざまな種類があり、機種によって価格も大きく異なります。補装具費支給制度では、補聴器の種類ごとに購入基準額が定められています。
例えば、高度難聴用のポケット型補聴器は44,000円、耳かけ型は46,400円、重度難聴用の耳かけ型は71,200円、オーダーメイドの耳あな型は144,900円などの基準額が設定されています。
基準額を超える価格の補聴器を購入する場合も、差額を自己負担することで購入できる場合があります。
ただし、自治体によって取り扱いが異なることがあるため、詳細は自治体窓口で確認しましょう。
▼参考:補装具種目一覧|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001516913.pdf
補装具費支給制度の申請方法

障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度に申請する手順は、自治体によって異なります。
ここでは、一般的な申請手順について説明しますが、実際に申請する際は必ずお住まいの自治体に確認してください。
1.自治体の窓口で相談する
お住まいの市区町村の障害者福祉窓口で、制度や手続きについて相談します。自治体によって窓口の名称は異なる場合があります。
申請書や医師に作成してもらう「身体障害者診断書・意見書」の様式、指定医リスト等を受け取ります。
2.身体障害者手帳交付のための診断を受ける
指定医で聴力検査を受け、「身体障害者診断書・意見書」を作成してもらいます。
身体障害者手帳の申請に必要な診断書は指定医のみが作成できるので、事前に確認して受診しましょう。
3.身体障害者手帳の交付申請を行う
交付申請書、身体障害者診断書・意見書、本人写真を持参し、市区町村の障害者福祉窓口で身体障害者手帳の交付申請を行います。
内容審査と等級判定を行い、申請から1~3カ月程度で身体障害者手帳が交付されます。審査の結果、対象外と判断された場合は却下通知書が交付されます。
4.補装具費支給制度の申請書類を受け取り、補装具費支給のための診断を受ける
身体障害者手帳を持参し、障害者福祉窓口で補装具費支給制度に必要な申請書類を受け取ります。
その後、指定医を受診し、補聴器の必要性を証明する「医学的意見書(補装具費支給意見書」を作成してもらいます。
5.補聴器専門店で見積もりを依頼する
医学的意見書を持参して補聴器販売店を訪れ、専門スタッフに相談しながら補聴器を選びます。
購入を希望する補聴器の見積書を作成してもらいますが、この段階ではまだ購入はしません。
6.補装具費支給申請を行う
申請書、医学的意見書、補聴器の見積書をそろえて、障害者福祉窓口で補装具費支給申請を行います。申請の際には身体障害者手帳も提示します。
身体障害者更生相談所が専門的な審査を行い、市区町村が最終的に判定します。支給が認められると、「補装具費支給券」が交付されます。
申請から結果通知までは、1~3カ月程度が目安です。
7.補聴器を購入する
補聴器販売店に「補装具費支給券」、見積書、自己負担金を持参し、見積書に基づいて補聴器を購入します。
自治体独自の補聴器購入費用助成制度とは
身体障害者手帳の対象とならない場合でも、自治体独自の補聴器購入費用助成制度を利用できる場合があります。
この制度は主に65歳以上の高齢者を対象としており、加齢により聴力が低下し、日常生活に支障がある軽度~中等度以上の難聴が認められる場合に、補聴器購入費用の一部が助成されるものです。
また、自治体によっては65歳未満を対象とした助成制度を設けている場合があるため、お住まいの自治体の最新情報を確認してください。
近年は難聴への早期対応が重要視されており、この制度を導入する自治体が全国的に増えています。一般社団法人日本補聴器販売店協会の調査によると、補聴器購入費用助成制度は全国390の自治体で実施されています(2024年12月1日現在・18歳以上を対象)。
助成金額や対象条件は自治体によって異なるため、補聴器の購入を検討する際には自治体の窓口や公式ホームページで詳細を確認することが大切です。
▼参考:全国の自治体における補聴器購入費助成制度の実施状況|一般社団法人日本補聴器販売店協会
https://www.jhida.org/common/updatefiles/2025joseikin.pdf
補聴器購入費は医療費控除の対象になる?

補聴器の購入費用は、条件を満たすことで医療費控除の対象になる場合があります。
補聴器購入費用を含めた年間の医療費が一定額を超えた場合、確定申告をすることで所得税や住民税の一部が還付され、結果として自己負担を軽減することができます。
医療費控除とは
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が合計10万円(所得200万円未満の方は所得の5%)を超えた場合に適用できる所得控除制度の一つです。
医療費控除を申請することで課税所得を減らすことができ、確定申告により税金の一部が還付される可能性があります。
本人だけでなく、生計を同一にする家族の医療費も合算することができるため、家族の医療費もまとめて控除対象になります。
補聴器購入費が医療費控除の対象となる条件とは
2018年から、補聴器の購入費用は一定の条件を満たす場合に医療費控除の対象となりました。
対象となるのは、説明や会話を聞き取ることが難しいレベルの難聴があり、医師の診察で補聴器使用の必要性を認められた場合に限られます。
▼参考:補聴器の購入費用に係る医療費控除の取扱いについて(情報)|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/180416/index.htm
医療費控除の申請方法
補聴器を購入する前に、補聴器相談医の診察を受けます。診察の結果、補聴器の利用が必要と判断された場合には「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を作成してもらいます。
補聴器相談医とは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する医師で、難聴のある方に対して補聴器利用の必要性を判断し、適切な補聴器の使用を推進する役割を担っています。
診療情報提供書を受け取ったら、それを持参して認定補聴器専門店に提出し、補聴器を購入します。
購入後は、診療情報提供書の写しと補聴器購入時の領収書を必ず受け取り、確定申告の際に提出または提示します。
補聴器を紛失した場合の保険・補償について
補聴器は小型で付け心地も自然なため、紛失するリスクが高い機器です。
すべての補聴器が対象ではありませんが、補聴器メーカーや販売店によっては紛失保証が用意されており、保証期間内であれば同じ補聴器を補償してもらえる場合があります。
メーカーの紛失保証とは
補聴器には、一般的な故障時の保証や事故によるトラブルに対応する保証に加え、機種によっては紛失時に対応する保証サービスが用意されている場合があります。
こうした紛失に関する保証が付帯している場合、一定の条件を満たすことで、代替機の提供や費用の一部補助を受けられるケースもあります。
ただし、保証内容や適用期間はメーカーや購入した販売店によって異なるため、購入時に受け取った保証書や案内資料を確認することが大切です。不明点がある場合は、購入した店舗へ相談してみると安心です。
補聴器の購入に保険は適用される?高齢者向け助成制度や紛失保証も解説|まとめ
補聴器の購入費用は、国民健康保険・社会保険・介護保険のいずれも原則として保険適用外です。
補聴器は治療を行う医療機器ではなく、聞こえを補助し生活の質を高めるための補助機器として位置づけられているため、公的医療保険の給付対象とはなっていません。
しかし、以下の方法で費用負担を軽減できる可能性があります。
- 身体障害者手帳の対象となる方は、補装具費支給制度を利用することで原則基準額の1割負担で補聴器を購入できます。
- 手帳の対象とならない場合でも、自治体独自の高齢者向け助成制度を利用できる場合があります(全国390以上の自治体で実施中)。
- 補聴器相談医の診断を受けることで、医療費控除の対象とすることも可能な場合があります。
- 紛失が心配な場合は、メーカーや販売店の紛失保証付きの製品を選ぶと安心です。
補聴器は高額ですが、聞こえをサポートして生活の質を維持する重要な機器です。医療機関や自治体、補聴器専門店に相談し、ご自身に合った補聴器と制度を確認しましょう。
愛知県補聴器センター・岐阜県補聴器センターでは、お客様一人ひとりに合った補聴器のご提案をいたします。
補聴器の補助金に関するご案内も行っておりますので、お近くにお住まいの方で、聞こえに関するお悩みがある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
近くの店舗を探す