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「右側からの呼びかけは聞こえるのに、左側からだとうまく聞き取れない…」
「左耳だと電話はハッキリ聞こえるのに、右耳だと何だか聞こえにくい」
このような場合、難聴が片耳だけに起こっているのかもしれません。
片耳のみに難聴の症状がある方の中には、一方の耳は「聞こえる」ので、片耳の聞こえにくさを放置してしまう方もいらっしゃいます。
本記事では、片耳難聴の原因や症状、片耳難聴で困る場面などについてご紹介します。
補聴器を用いて、難聴になってしまった片耳をサポートする方法もご紹介していきますので、本記事を参考に、片耳難聴を持つご家族様の生活の質を向上させましょう。
片耳難聴とは?

難聴には両耳同時に起こる場合だけでなく、片耳だけが難聴になる「片耳難聴」があります。
片耳難聴とは、片方の耳だけが聞こえにくい状態のことを言います。
「一側性難聴」や「一側ろう」と言われることもあり、難聴がない側の耳は正常に聞こえる点が特徴です。
片耳難聴は先天的・後天的原因の両方の場合があるため、一概に原因や対処法を断定することはできません。
まずは聴力検査を受け、ご自身の聞こえの状態を把握することが大切です。
片耳難聴で困る場面

片耳難聴は片方の耳が聞こえているため、日常生活に問題はないと思われがちですが、両耳の難聴とはまた違った悩みや困りごとがあります。
片耳が難聴になってしまった際のよくある困りごとは、次の3つが挙げられます。
- ・聞こえにくい側から話しかけられるとわからない
- ・騒がしい場所で聞こえにくい
- ・音源定位ができず交通事故リスクが高まる
ここからは、片耳難聴で困る場面について解説していきます。
難聴で困る場面①聞こえにくい側から話しかけられるとわからない
片耳難聴でもっとも困る場面は、聞こえにくい側から話しかけられると、内容がわからないということです。
聞こえにくい方の耳に向かって話しかけられても、自分の頭が壁のように音声を遮る(頭部陰影効果)ので、聞こえる方の耳にも、音声が届きにくくなります。
また、集中したい時に聞こえにくい耳よりも、聞こえる耳からの音声などが気になるため、気が散ってどっと疲れる・聞こえにくい側の情報がより伝わりにくくなる、というのも、片耳難聴においてよくある悩みです。
会話において内容がはっきり聞こえないと、相手に聞き返す手間が生まれたり、聞こえたふりで対処してしまうというケースもよくあるでしょう。
難聴で困る場面②騒がしい場所で聞こえにくい
騒がしい場所で聞こえにくいのも、片耳難聴の方によくある悩みです。
両耳が聞こえる方の場合、聴覚から得られる情報は膨大な量になるため、脳は省エネのために「自分にとって必要な情報」だけを瞬時に判断して聞き取っています。
これを「カクテルパーティー効果」といいます。
電車のアナウンスや病院での呼び出しが聞き取れたり、騒がしい中でも会話出来るのは、このカクテルパーティー効果によるものです。
しかし、片耳難聴の方は、カクテルパーティー効果が得られないため、騒がしい場所で必要な情報を聞き取るのに困難を覚えます。
その結果、外出そのものを控えてしまったり、「会話にうまく入れないから」と言って他人との会話を避けると、聴覚刺激や思考の回数がどんどん減り、認知機能の低下が進行する可能性もあります。
認知症を予防するためにも、難聴が片耳だけであったとしても聴覚を補ってあげましょう。
難聴と認知症の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
難聴で困る場面③音源定位ができず事故などのリスクが高まる
人間が音を感じるうえで大切な機能に「音源定位」があります。
音源定位とは、脳が音の微妙な強さや時間を区別し、音がどの方角から聞こえているのか判断する能力を指します。
耳は、頭を挟んで両側についているため、振動が脳に届くまでの微妙な時間差や強さを脳で分析しています。
したがって、音源定位には、両耳の聴力が必要です。
片側の耳が難聴の場合、左右の耳から入る音の違いを分析できないため、音源がどこから来ているのか、判断できません。
そのため、少し離れた距離から話しかけられた際、すぐに反応することができずにキョロキョロしてしまったり、スポーツをする時に声や音のする方向が分からずに困ることがあります。
また、片耳が難聴のまま対策をせずにいると、通路を歩いている際などに車のエンジン音や走行音が聞こえにくく、車がどこから来ているか解らないため、交通事故のリスクが高まるといった危険があります。
このようなリスクを下げるためにも、片耳が難聴の場合は聴力を補うことが重要です。
片耳難聴には補聴器という選択肢を

紹介したように片耳難聴であっても困る場面は多く、仕事や日常生活に支障をきたす可能性が高いです。
家族や友人が聞こえる側から話しかけるなどの配慮も重要となりますが、補聴器を活用することで片耳難聴の聴力をサポートすることが可能となります。
そこで以下では、補聴器で難聴の片耳をサポートする方法を紹介します。
片耳難聴に使える補聴器機を使う
補聴器は両耳難聴の方が使うもの、というイメージがありますが、片耳難聴でも補聴器は利用できます。
一般的な耳掛け型・耳あな型の他、クロス補聴器という「難聴側から聞こえる音や声を聞こえる側の耳で聞き取る」ための補聴器もあります。
クロス補聴器は、マイクと補聴器を装着することが特徴となっていて、聞こえない耳にマイクをつけ、もう片方には補聴器を装着する仕組みです。
聞こえにくい方の音や声をマイクで拾って聞こえる方の補聴器に飛ばすことで、片耳で左右両方の音を聞くことができます。
両耳に装用する
片耳難聴では、難聴の症状がある片耳を補聴器でサポートする場合に、難聴側だけではなく、聞こえる側の耳にも補聴器を装着する場合があります。
難聴にもレベルがあります。ご自身では「聞こえている」と思っていても、測定の結果、レベルの違いはあれど両耳とも難聴がある場合は、補聴器を両耳に装用するとより効果的です。
補聴器は、買ったからといってすぐに「聞こえる」わけではありません。
購入後も何度か補聴器店に通い、自分の聴力に合わせて調整をする必要があります。
自分に合った補聴器を選び、継続してメンテナンスを受けるためには、補聴器専門店での購入が一番です。
補聴器専門店では、難聴が片耳だけの方でも使いやすい補聴器を取り揃えております。どうぞお気軽にご相談ください。
【両耳が聞こえにくくなる前に両耳の聞こえのケアをしませんか?】
難聴が片耳に起こる一側ろうの原因

難聴が片耳だけに起こる場合、いくつかの原因が考えられます。
具体的には、以下の6つです。
- ・先天性(生まれつき)
- ・ムンプス難聴
- ・突発性難聴
- ・メニエール病
- ・慢性中耳炎
- ・音響性難聴
ここからは、片耳難聴の原因を解説します。
先天性(生まれつき)
蝸牛神経(聞こえ方を司るかたつむり型の器官)の低形成など、先天的な原因によって、生まれつき片耳難聴であるという方もいます。
新生児の約1000人に1人の割合で先天性の片耳難聴を持っていると言われており、残念ながら現時点で有効な治療法はないと言われています。
また、出生時や出生後に、母親の胎盤や母乳を通じてCMVウイルス(サイトメガロウイルス)に感染すると難聴になることもあります。
ムンプス難聴
ムンプス(おたふく風邪)が原因で難聴になるムンプス難聴があります。
ムンプス難聴はほとんどが片側難聴で、91%以上が重度の難聴という調査結果が出ています。
(参考『2015~2016年のムンプス流行時に発症したムンプス難聴症例の全国調査』/日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会)
ムンプス難聴の発症者には、罹患した子どものほか、看病した養育者の発症も考えられています。
突発性難聴
突発性難聴は、ある日突然耳が塞がったように片側だけ聞こえにくくなる症状で、原因は現在特定されていません。
20~50代を中心に、すべての年代で起こる可能性があると言われています。
突発性難聴は、症状が出た場合、すみやかな治療が改善のカギとなるため、耳が突然聞こえにくくなったら、すぐに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
メニエール病
メニエール病による片側難聴もあります。
メニエール病とは、内耳のリンパ液が増えすぎて起こる病気で、30~40代の女性に起こりやすい病気です。
回転性のめまいが10分から数時間ほど続き、耳鳴りを伴う方も多いのが特徴で、耳が詰まったような感じで、低音から聞こえにくくなります。
メニエール病による難聴は、早期発見と適切な治療で1/3は完治すると言われています。
慢性中耳炎
慢性中耳炎では、耳漏によって鼓膜の穴が塞がらなくなります。
鼓膜に穴が空いた状態が続くことで、鼓膜の粘膜が厚くなったり石灰化したりして、耳小骨の動きが低下し、音の振動が伝わりにくくなります(伝音難聴)。
また、慢性中耳炎による炎症で、蝸牛の機能が徐々に低下することもあり(感音難聴)、音の振動があっても認識できなくなり、聞こえにくさにつながることもあります。
音響性難聴
大きな音を片耳で聞いた場合、片耳が難聴になることがあります。
音響性難聴は、別名「音響外傷」ともいい、大きな音を聴き続けることで、内耳の「蝸牛」という器官にある有毛細胞が傷つき、壊れて音が聞こえにくくなる症状のことです。
例えば、音楽ライブで右側だけスピーカーの近くにさらされたり、イヤホンをいつも同じ側の耳に着けていたり、趣味で射撃を行う方に起こりやすい症状と言えます。
難聴が片耳で困ること|まとめ

片耳難聴の方が困る場面としては、音の聞き分けがうまくできず騒がしい場所での聞き取りに苦労することや、カクテルパーティー効果が得られないことなどが挙げられます。
名前を呼ばれてもどこから呼ばれたのかわからないために、しばらくキョロキョロしてしまったり、何度も聞き返すことに引け目を感じて会話に入るのをやめてしまう方もいます。
加齢性難聴(老人性難聴)では、一般的に両耳が同時に聞こえにくくなりますが、左右差がある場合は、補聴器で聞こえ方を補正してあげることで、より快適で安全な生活を送れます。
もし、片耳難聴でお困りの場合は、ぜひ当センターにご相談ください。
ご相談は、ご本人・ご家族様を問いません。難聴の方の聞こえや悩みに合わせて、最適な補聴器を選び、フィッティングいたします。
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