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「片方の耳だけが聞こえにくい」「大切な会話を聞き逃してしまう」―そんな悩みを抱えていませんか?
実は、片耳難聴には「クロス補聴器」という、専用の補聴器があります。
この記事では、 クロス補聴器の基礎知識から選び方、さらには「どのような難聴に効果があるのか」「向いていないケース」まで、誰にでもわかりやすく徹底的に解説していきます。
目次
クロス補聴器とは?基礎から仕組みまで解説

クロス補聴器とは、片耳の聞こえに悩む方のために開発された、特殊な補聴器システムです。
ここでは、そもそもクロス補聴器とはどのような機能が搭載されているのかについて、一般の補聴器との違いなどを交えてご紹介します。
クロス補聴器の基本的な仕組み
クロス補聴器は、聞こえの悪い耳で拾った音を、良い方の耳にワイヤレスで届けるシステムです。
従来の補聴器が音を増幅して同じ耳に届けるのに対し、クロス補聴器は音を反対側の耳に転送する点が特徴的です。
これにより、頭部による音の遮断(ヘッドシャドウ効果)を解消し、両耳で聞こえているような感覚を実現します。
特に、聞こえの悪い側からの呼びかけや会話を聞き取る上で、劇的な改善が期待できます。
一般の補聴器との違い
通常の補聴器とクロス補聴器には、大きく分けて以下の違いがあります。
| 項目 | 一般の補聴器 | クロス補聴器 |
|---|---|---|
| 役割 | 聞こえにくい耳の音を増幅して聞かせる | 聞こえにくい耳の音を転送して良い耳で聞かせる |
| 機器 構成 |
片耳、または両耳に補聴器を装着 | 難聴側:集音器(マイク)、良聴側:受信機(補聴器)を装着 |
| 適応 難聴 |
両耳または片耳の聴力低下(増幅で改善できる場合) | 片耳の高度難聴/失聴(良聴側の聴力が良好または増幅できる場合) |
| 転送 方法 |
なし | ワイヤレス通信による音声転送 |
これらの特徴により、片耳難聴の方でも、周囲の音をしっかりと捉えることができるようになります。
クロス補聴器が適している難聴の種類

ここまでは、クロス補聴器にはどのような特徴を持っている補聴器なのかについてご紹介しました。
ここでは、具体的にどんな難聴に対してクロス補聴器が適しているのか、より詳しくご紹介します。
片側性難聴(SSD)の場合にはクロス補聴器が適している
クロス補聴器が特に効果を発揮するのは、片側性難聴(SingleSidedDeafness:SSD)の場合です。
この状態は、片方の耳の聞こえが著しく低下または失われている一方で、もう片方の耳は正常か比較的良好な聞こえを保っている状態を指します。
良聴側が正常な場合は「CROSシステム」が、良聴側にもわずかな難聴がある場合は「BiCROSシステム」が検討されます。
これらの2つのシステムについては次の目次でご紹介しています。
早期に適切な対応を行うメリット
片耳難聴は、日常生活において「音の方向がわからない」「騒がしい場所で会話を聞き取れない」「聞こえない側からの物音や呼びかけに気づかない」といった問題を引き起こします。
これらの問題は、コミュニケーションが取りにくいといった不便さだけでなく、交通事故などのさらなる大きなトラブルにも繋がりやすくなります。
そこで早期に適切な対応を行うことで、コミュニケーションの質を大きく改善し、生活の不安や不便さを軽減できる可能性があります。
CROSシステムとBiCROSシステムの違い

クロス補聴器は、良聴側の聴力状態に応じて、CROS(クロス)とBiCROS(バイクロス)の2種類に分けられます。
ここではこの2種類の補聴器について解説します。
CROSシステムの特徴
CROSシステムは、片耳の聴力が正常で、反対側の耳に高度な難聴がある方向けのシステムです。
聞こえない側の音を、聞こえる耳に転送することで、360度の音環境を実現します。日常会話や外出時の安全確認などで、大きな効果を発揮します。
- 適応ケース: 片耳が高度難聴/失聴、もう一方の耳の聴力は正常な方
- システムの仕組み: 難聴側の音を拾い、正常な聴力の耳に転送して聞かせる。良聴側の耳には音の増幅機能は基本的に不要です。
- 期待できる効果: 聞こえない側からの音や会話も聞こえるようになり、360度の音環境を確保できる。
BiCROSシステムの特徴
両耳に難聴がある方向けのシステムです。聞こえの良い方の耳に補聴器を装着し、反対側からの音も合わせて聞くことができます。より多くの音情報を集めることで、豊かな聞こえを実現します。
- 適応ケース: 片耳が高度難聴/失聴、もう一方の耳にも軽度〜中等度の難聴がある方
- システムの仕組み: 難聴側の音を拾い、聴力の低下した耳に転送。転送された音と、良聴側の耳が拾った音の両方を、増幅して聞かせる。良聴側には補聴器(増幅機能)が必要。
- 期待できる効果: 難聴側の音情報も得ながら、聴力の低下した良聴側の音も増幅することで、より多くの音情報を集め、豊かな聞こえを実現する。
クロス補聴器が向いていないケースは?

クロス補聴器に限ったものではありませんが、補聴器を選ぶ際にはご自身の聞こえのレベルや難聴のタイプにあわせたものを選ぶことが大切です。
ここでは、クロス補聴器が向いていないケースについてご紹介します。
中等度〜高度難聴で両耳に均等に難聴がある場合
両耳とも聴力が低下していても、クロス補聴器で音を転送するほどの一方的な失聴ではない場合、基本的には両耳に通常の補聴器を装着することが推奨されます。
クロス補聴器はあくまで「良聴耳に音を届ける」システムであり、両耳の聞こえを全体的に底上げしたい場合には、音を増幅させる通常の補聴器がより適しています。
聴力が変動するタイプの難聴
突発性難聴の回復期やメニエール病などの難聴の場合、クロス補聴器による効果の予測や調整が難しくなることがあります。
聴力の変動が大きい場合は、まず医師による治療を優先し、聴力が固定されてから補聴器の適合を検討する必要があります。
医師の診断が必要なケース
以下のような難聴の場合は、補聴器相談の前に必ず耳鼻咽喉科の医師の診断が必要です。
- 急に聞こえが悪くなった場合(突発性難聴の可能性)
- 耳垂れ、痛み、めまいなどの症状を伴う場合
- 15歳未満の方
これらのケースでは、病気の治療が優先されます。
クロス補聴器のタイプ(耳かけ型・耳あな型)の比較

クロス補聴器にも、耳かけ型・耳あな型と形状に種類があります。
ここでは、それぞれの補聴器の特徴について簡単にご紹介します。
耳かけ型の特徴
耳かけ型は最も一般的なタイプです。耳の後ろに本体を掛け、透明なチューブで音を耳に導きます。操作がしやすく、電池交換も簡単に行えるため、初めて使用される方にもおすすめです。
また、高度な音声処理が可能な大きめのマイクを搭載できるため、様々な環境での使用に適しています。
耳あな型の特徴
耳あな型は、外観を重視する方に選ばれています。耳の穴に直接収まるデザインで、目立ちにくいのが特徴です。ただし、サイズが小さい分、機能面では耳かけ型に比べてやや制限があります。メガネを使用される方との相性も考慮が必要です。
耳かけ型・耳あな型のそれぞれの適応条件
補聴器を選ぶ際は、以下のポイントを総合的に判断します。
- 聴力レベルと種類
- 耳の形状と大きさ
- 日常的な使用環境
- 操作性への要望
これらの条件を専門家と相談しながら検討することで、最適なタイプを選択することができます。
最新のクロス補聴器に搭載されている機能一覧

デジタル技術の進歩により、クロス補聴器の機能は年々進化しています。
ここでは、最新のクロス補聴器に搭載されている機能などについて解説します。
高度なデジタル信号処理機能
最新のクロス補聴器は、高度なデジタルチップを搭載し、以下のような機能により、より自然で快適な聞こえを実現しています。
| 機能名 | 概要 | 効果 |
|---|---|---|
| 騒音抑制機能 | 周囲の継続的な騒音(エアコ ン、車の走行音など)を自動で識別・抑制。 |
騒がしい環境下でも疲れにくい聞こえを実現。 |
| 会話強調機能 | 騒音の中でも会話音声を 自動的に際立たせて強調。 |
レストランや会議などでの会話の聞き取りやすさが向上。 |
| 自動環境適応 | 聞いている環境(静かな場所、 屋外、音楽など)を瞬時に判断し、 最適な設定に自動で調整。 |
ユーザーが手動で設定変更する手間を軽減。 |
最新のクロス補聴器は、高度なデジタル信号処理技術を搭載しています。騒音を抑制し、会話音声を強調する機能や、様々な環境に合わせて自動で設定を調整する機能なども備えています。
Bluetooth対応機能と利便性
Bluetooth機能を搭載したモデルが増え、日常生活での利便性が大きく向上しています。
- スマートフォン連携: 音楽や通話の音声を直接補聴器でクリアに聞くことができます。
- テレビ接続: 別売りの送信機(アクセサリー)を使用し、テレビの音声を補聴器にワイヤレスで転送できます。
- 専用アプリ: スマートフォンアプリを使って、音量調整やプログラムの切り替え、細かい音質調整などが手元で行えます。
クロス補聴器は、スマートフォンとの連携も進化しています。
音楽やテレビの音声を直接補聴器で聴くことができ、アプリを使って細かな調整も可能です。これにより、日常生活での利便性が大きく向上しています。
モデルごとの価格帯の目安
クロス補聴器は集音器と受信機(補聴器)のシステム一式での購入となるため、通常の補聴器よりも価格が高くなる傾向があります。
| モデルのグレード | 主な機能レベル | 価格帯の目安(システム一式) |
|---|---|---|
| スタンダードモデル | 基本的なクロス機能、シンプルな騒音抑制。 | 30~50万円 |
| ハイエンドモデル | 騒音下での会話強調、自動環境適応機能など、バランスの取れた機能。 | 50~60万円 |
| 最上位モデル | 最上位のデジタル処理、多機能なBluetooth接続、 高度な雑音抑制機能。 |
70~80万円 |
機能と価格のバランスを考慮しながら、長期的な使用を見据えて選択することが大切です。
補聴器の選び方のポイント

最適なクロス補聴器を選ぶには、専門家との相談が不可欠ですが、自分自身のライフスタイルに合わせて優先順位を決めておくことも重要です。
ここでは、補聴器の選び方のポイントについてご紹介します。
1. ライフスタイル・使用環境の観点
補聴器は毎日使うものなので、以下のようなポイントをチェックしましょう。
- 主に静かな場所で使う: 基本的な機能で十分な場合があります。耳あな型などの外観重視のタイプも検討できます。
- 職場や外出先など騒がしい場所で頻繁に使う: 高度な騒音抑制機能や会話強調機能が必須です。耳かけ型の高性能モデルが推奨されます。
- メガネを常用している: メガネの着脱が多い方は、干渉の少ない耳あな型も選択肢に入ります。
- スマートフォンで音楽をよく聴く: Bluetooth対応機能を搭載したモデルを選びましょう。
2. 価格の観点
予算に合ったモデルを選ぶことも大切ですが、補聴器は医療機器であり、定期的な調整やメンテナンスが必要です。
初期費用だけでなく、電池代やメンテナンス費用なども含めたトータルコストを考慮しましょう。
3. 機能の観点
- 電池タイプ: 電池交換の手間を省きたいなら充電式、予備電池で安心感を得たいなら電池式を選びましょう。
- 操作性: 手先の細かな作業が苦手な方は、耳かけ型で大きめの操作ボタンがあるタイプや、スマホアプリやリモコンで操作できるタイプがおすすめです。
クロス補聴器による聞こえの改善効果

クロス補聴器は、片耳難聴の方の生活の質を大きく向上させる可能性があります。
ここではシステム別の効果と実際の生活での変化について説明します。
期待できる具体的な改善効果
クロス補聴器の使用により、以下のような効果が期待できます。
- 会話の聞き取りやすさの向上
- 周囲の状況把握力の向上
- 安全性の向上
これらの効果により、日常生活での不安や不便さが大きく軽減されます。
装用による生活の変化
クロス補聴器の使用は、コミュニケーションの質を向上させ、活動の幅を広げます。具体的な変化について見ていきましょう。
- 会話時のメリット:複数人との会話がスムーズになり、聞き返しの回数が減少します。特に、聞こえない側からの声かけにも気づきやすくなるため、ストレスなくコミュニケーションを取ることができます。
- 社会活動での効果:レストランや街中など、様々な環境での活動が快適になります。周囲の音が聞こえやすくなることで、より安心して行動できるようになるでしょう。
- 日常生活での変化:聞きづらい側からの呼びかけや、色々なお知らせ音など、日常生活での聞こえが改善され、生活の質が向上します。また、常に聞こえる耳を意識する必要がなくなり、精神的な負担も軽減されます。
クロス補聴器を選ぶなら専門店相談がおすすめな理由

クロス補聴器を最大限に活用し、快適な聞こえを実現するためには、専門家による適切な導入プロセスと継続的なサポートが不可欠です。
愛知県・岐阜県でクロス補聴器をお探しなら、ぜひ愛知県補聴器センター・岐阜県補聴器センターへお気軽にご相談ください。
1. 正しい聴力測定で適切な機種を選べる
補聴器専門店では、補聴器に特化した専門的な聴力検査を行います。
この検査結果をもとに、難聴の程度だけでなく、聞こえの特性やCROS(クロス)とBiCROS(バイクロス)のどちらが適しているかを正確に判断し、最適な機種を選定してくれます。
2. 実際に試聴できる
補聴器は実際に装用してみないと、その効果や使用感は分かりません。実際にお店で補聴器をお試しいただくと、皆様その聞こえの違いに驚かれます。
「まだ補聴器は必要ない」と感じていた方でも、実際に使っていただくことで「ここまで改善されるんだ」とお話されることも多いです。
3. 調整・アフターフォローが充実している
補聴器は購入して終わりではありません。
お使いになる方の聞こえの変化などに応じて細かな調整(フィッティング)を繰り返すことで、はじめて最適な聞こえが得られます。
専門店では、導入後の定期的な点検や調整、クリーニングといったアフターフォローが充実しており、長く快適に補聴器を使い続けるためのサポートを受けられます。
クロス補聴器の使用開始からケアまで

クロス補聴器を最大限に活用するためには、適切な導入プロセスとケアが不可欠です。
ここでは、初めて使用される方に向けて、導入からメンテナンスまでの重要なポイントを解説していきます。
導入までの流れ
クロス補聴器の導入は、専門家との相談から始まります。適切な機種選択と調整により、より良い聞こえを実現することができます。
聴力検査と適合判定
まずは詳しい聴力検査を行います。この結果をもとに、クロス補聴器が適しているかを判断し、最適な機種を選定していきます。検査では、両耳の聴力レベルや音の聞こえ方を詳しく確認します。
試聴期間の過ごし方
実際の生活環境での使用感を確認するため、1週間から2週間程度の試聴期間を設けます。この期間中に様々な場面での聞こえを確認し、必要な調整を行っていきます。特に会話や外出時の聞こえについて、細かくチェックしていきましょう。
フィッティングの重要性
専門スタッフによる細かな調整を重ねることで、最適な音環境を作り出していきます。生活環境や使用目的に合わせた設定が、快適な装用感につながります。定期的な調整により、より自然な聞こえを実現できます。
メンテナンスとケア
クロス補聴器を長く快適に使用するためには、日々の適切なケアが重要です。基本的なお手入れから定期点検まで、しっかりと管理していきましょう。
日常的なお手入れ
補聴器を長持ちさせるために、毎日の基本的なケアが欠かせません。就寝時には必ず電源を切り、専用の乾燥ケースに保管します。また、汗や湿気から守るため、定期的な清掃も重要です。
バッテリー管理
クロス補聴器は通常の補聴器より電池の消耗が早くなります。充電式の場合は毎日の充電を習慣づけ、電池式の場合は予備の電池を常に携帯しておきましょう。
定期点検の必要性
3ヶ月に1回程度の定期点検を受けることで、常に最適な状態を保つようにしましょう。専門スタッフによる調整や点検を定期的に受けることで、より快適な装用感を維持できます。
クロス補聴器の活用で実現する快適な聞こえ

適切な使用方法を身につけることで、クロス補聴器の効果を最大限に引き出すことができます。初めての方でも安心して使えるよう、基本的なポイントを解説します。
活用のコツとポイント
装用開始から慣れるまでの期間は、特に注意が必要です。段階的な使用と適切な環境設定で、より快適な聞こえを実現しましょう。
装用開始時の注意点
最初は1日2~3時間程度の短時間から始め、徐々に装用時間を延ばしていきます。静かな環境から使い始め、慣れてきたら様々な場面での使用に広げていきましょう。
環境別の使用方法
場所や状況に応じて、適切な設定を選択することが大切です。例えば、レストランでは騒音抑制機能を活用し、会議では方向性マイクの設定を使うなど、環境に合わせた使い分けが効果的です。
慣れるまでの期間
個人差はありますが、通常1~2ヶ月程度で基本的な使用に慣れてきます。焦らず、専門家のアドバイスを受けながら、じっくりと装用感を確認していきましょう。
専門家によるサポート体制
快適な聞こえを維持するためには、専門家による継続的なサポートが欠かせません。定期的な調整や相談を通じて、より良い聞こえの環境を作っていきましょう。
クロス補聴器の選び方|まとめ
クロス補聴器は、片耳難聴でお悩みの方の生活を大きく改善する可能性を秘めています。適切な選択と使用方法により、以下のような効果が期待できます。
- 自然な音の聞こえ
- コミュニケーションの質の向上
- 社会活動の幅の拡大
- 生活の質の向上
ただし、最適な効果を得るためには、専門家による適切な選定とフィッティング、そして継続的なケアが欠かせません。まずは気軽に専門家への相談から始めてみましょう。
愛知県補聴器センター・岐阜県補聴器センターでは、経験豊富な専門スタッフが、お一人おひとりの症状や生活環境に合わせた丁寧なカウンセリングを行っています。
「もっと快適な聞こえを実現したい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。