難聴が認知症のリスクに!ご家族への補聴器のすすめ方

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「最近、会話がかみ合わない」「呼んでも返事がない」
ご家族にこうした変化があると、『もしかして認知症?』と心配になる方も多いのではないでしょうか。

実は、難聴と認知症には深い関係があり、難聴があると認知症のリスクが高まることが多くの研究で示されています。

一方で、『認知症だと思っていたら、実は難聴が原因だった』というケースもあり、早めに難聴へ対応することで、認知症のように見える症状(いわゆる“偽認知症”)が改善する可能性もあります。 

この記事では、難聴と認知症の関係や原因となるメカニズム、難聴と補聴器の関係、そして補聴器装用や受診を嫌がる親御さんへの「言い出し方」のコツを、最新の研究や実例も交えながらわかりやすく解説します。

難聴が認知症リスクを高める理由

音を聞こうとするおばあさん

2015年に厚生労働省が発表した新オレンジプランの中で、初めて難聴が認知症の危険因子として加えられました。

また、海外医学雑誌THE LANCETによると「医学的介入ができる認知症の原因」では、難聴がトップの9%(※のちに2020年の調査にて8%に改定)となっており、難聴が認知症に大きく影響していることがわかります。

その後も、難聴と認知症の関係を示す研究は増え続け、2023年に発表されたACHIEVE研究(米国の大規模臨床試験)では、『難聴のある高齢者が補聴器などの支援を受けると、認知機能低下の速度が抑えられた』という結果が報告されています。

つまり、難聴は認知症の原因・危険因子になり得る一方で、早く気づいて適切に対応すれば、認知症リスクを減らせる可能性があるということです。

難聴が認知症の進行を高める理由には、以下の2つがあります。

  • コミュニケーションがとりにくく孤立する
  • 音による刺激が減り神経細胞が衰える

さらに近年は、「脳のエネルギーの使い方(認知負荷)」という視点からも、難聴と認知症の関係が注目されています。

難聴があると、脳は『何と言ったのか』を聞き取るために多くのエネルギーを割かざるを得ず、記憶や判断に使うはずのリソース(資源)が削られ続けることが、認知症の原因の一つになりうると考えられているのです。

それぞれ詳しく解説します。

コミュニケーションがとりにくく孤立する

難聴の方は、コミュニケーションがとりにくく、孤立しやすい傾向にあります。

難聴が原因で外出先でのコミュニケーションが上手く取れず、
「皆で会話をしていても内容が解らないので黙ってしまう」
「何度も聞き返すので、周りの方から相手にされなくなってしまった」
という経験から外出をしなくなってしまいます。

更に、ご自宅で一緒に暮らすご家族にとって、何度も同じ発言を聞き返されたり、大音量のテレビを一緒に見るのは大きな負担となります。

「聞き返されるのが面倒だから話しかけないでおこう」
「一緒の部屋でテレビを見るのはやめよう」
という事になりコミュニケーションが減るので、気付いたら難聴の方が孤立してしまうケースも少なくありません。

ここで重要なのは、人は耳から入った言葉を脳内で理解し、また言葉に変換してコミュニケーションを図っているということです。

話しかけられる回数が減ってしまうということは、思考の回数が減り、脳の機能が衰えることにもつながります

そればかりか、孤立が原因で抑うつが起こり、その抑うつが認知症の原因となることもあります。

このように、難聴による孤立や、コミュニケーション不足は認知症の発生と進行に大きく関わっています。

ご家族から見ると、「話しかけても返事がない」「同じことを何度も聞いてくる」ために、つい会話を減らしてしまいがちですが、それが結果的に難聴と認知症の悪循環を生んでしまうこともあります。

難聴と認知症の関係を断ち切るためには、補聴器などで聞こえを補うことに加え、ご家族が意識してコミュニケーションの機会を保つことも大切です。

音による刺激が減り神経細胞が衰える

音による刺激が減り、神経細胞が衰えることも認知症に関係していると言われています。

わたしたちの耳は絶えず音を感知し、脳で情報を処理しています。

ところが、難聴によって音による脳への刺激が減ると、脳の情報処理回数が減るため、神経細胞の働きが衰えます

運動をやめて筋肉が衰えると、外に出るのがおっくうになるように、神経細胞の衰えがさらに認知機能の低下を加速させる可能性も高いです。

近年は、難聴があると「聞き取る」ために脳の前頭葉などがフル回転し、その分「覚える・考える」ためのエネルギーが不足する、という“認知負荷”のメカニズムも指摘されています。

難聴と認知症の関係は、『耳から脳への刺激が減る』だけでなく、『限られたエネルギーを聞き取りに取られてしまう』という二重の負担が原因になっていると考えると、イメージしやすいでしょう。

だからこそ、聞こえにくいと感じたら、早急に対応しなければいけません。

加齢性難聴のセルフチェック

チェック項目

加齢性難聴とは、加齢によって蝸牛(内耳にあるかたつむり状の器官)の中の有毛細胞がダメージを受け、音の感知・増幅に問題が起こり生じる難聴です。

加齢性難聴の特徴は「高音が聞こえにくい」ことです。

ここからは、加齢性難聴のセルフチェック項目を紹介します。

□会話中によく聞き返す

□後ろからの呼びかけに気づきにくい

□聞き間違いが多い

□車の接近にまったく気が付かなかった経験がある

□話し声が大きいと指摘されたことがある

□集会や会議など、複数人の会話が上手く聞き取れない

□電子レンジの音やドアチャイムが聞こえにくい

□相手の発言を推測で解釈していることがよくある

□テレビ・ラジオの音が大きいとよく指摘される

(参考:一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会 「聞こえ」をセルフチェック!

ひとつでも当てはまった方は、聞こえに問題があるかもしれません。

ご家族がチェックしてみて、「いくつも当てはまる」と感じる場合は、難聴と認知症の両方を念頭に置きつつ、早めに補聴器専門店での相談を検討していただきたい状態です。 

セルフチェックを一緒に行うことは、難聴の自覚が少ない親御さんに『自分はまだ大丈夫』と思わせず、自然に難聴と認知症の関係を意識してもらうきっかけにもなります。

「認知症だと思ったら難聴だった?」偽認知症という可能性

ここまで読むと、「うちの親はすでに認知症が始まっているのでは?」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし一方で、実際には認知症ではなく、難聴が原因で『認知症のように見えているだけ』というケースもあります。これがいわゆる“偽認知症”です。

例えば、次のような場面はありませんか?

  • 返事があいまいで「ボーッとしているように見える」
  • 会話の途中で話についてこられなくなり、「物忘れがひどい」と感じる
  • 質問に対して的外れな答えが返ってきて、「理解力が落ちた」と心配になる

実はこうした様子が、難聴による「聞き取れていない」「聞き間違えている」結果として起きていることも少なくありません。

難聴と認知症のどちらが原因かは、ご家族が判断するのは難しいため、『認知症外来+聴力検査』の両方を早めに受けておくと安心です。

もし難聴が主な原因であれば、補聴器で聞こえを補うことで、会話のやりとりや表情がはっきりしてくるなど、認知症のように見えた症状が改善する可能性もあります。

認知症かも?難聴の方が補聴器を嫌がる原因と対策

何をするのか忘れたおじいさん

難聴が認知症のリスクになると聞くと
「うちの親は大丈夫かしら」
と心配になる方もおみえになるでしょう。

特に、親御さんに認知症の兆候がすでにある場合、難聴によって認知症が進行する可能性があるため、注意が必要です。

難聴の改善に補聴器も有効な手段となります。

しかし、補聴器は依然としてご高齢者に受け入れられ難い傾向があります。もし親御さんに補聴器を勧めても、拒否反応を示されてしまうかもしれません。

そこで、ここからは難聴の親御さんが、補聴器を嫌がる原因と対策を紹介します。

自覚がない:一緒に聞こえのチェックを受ける

補聴器を嫌がる原因のひとつに「自覚がない」が挙げられます。

周囲が気を遣って大きく、ゆっくり話していると、案外自分が難聴だということに気付きにくいからです。

その場合、前述した「加齢性難聴のセルフチェック」を一緒に受けてみましょう。

しかし、難聴の自覚のない方に「耳が遠くてコミュニケーションが困難」とストレートに伝えてしまうと、心を閉ざしてしまうかもしれません。

「もっと色々な話がしたい」というように、やんわりと伝えましょう。

お孫さんに「もっとおじいちゃん(おばあちゃん)と話がしたい」と言ってもらうのも有効です。

さらに、「最近ニュースでも、難聴と認知症は関係があるって言っていたよ。一度チェックしておけば安心だから、一緒に行ってみない?」と、“心配”ではなく“安心のため”という言い回しにすると、親御さんのプライドを傷つけずに受診をすすめやすくなります。

また、パートナーの立場であれば『あなた、もう耳が遠いから病院行って』とは言わず、『私も聞こえが心配だから一緒に検査してみよう』と、あくまで“自分ごと”として誘うのもコツです。

補聴器が恥ずかしい:おしゃれな補聴器をすすめる

「難聴」=「老人」のイメージを持たれている方もいます。

まずは、加齢性難聴は50歳ごろから始まることを伝えて、難聴だから老人ではないことをしっかり説明しましょう。

また、今は目立ちにくい補聴器や、ファッション性の高い補聴器など、補聴器自体の種類も豊富です。

補聴器が昔の「大きい」「邪魔になる」「かっこ悪い」といったマイナスイメージをお持ちの方もいますので「一度実物を見てみよう」と誘うのもおすすめです。

難聴と認知症の関係を説明するときも、『補聴器をつけないと大変なことになる』と脅かすのではなく、『補聴器を使うと、今まで通り会話や外出を楽しめて、認知症の予防にもつながるらしいよ』と、前向きなメリットを強調すると受け入れてもらいやすくなります。

「最近の補聴器は小さくて、補聴器だと気づかれないデザインもあるよ」と、実物の写真やパンフレットを一緒に見ながら話すのも効果的です。

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関連記事補聴器にはどんな種類がある?補聴器の特徴や価格・メリットを解説

費用が心配:補聴器をプレゼントする

ご高齢で年金暮らしの場合、補聴器の値段がネックとなって「まだ聞こえる」と強がっている可能性もあります。

お金の話はデリケートなので、子どもに相談しにくい、という方も多いでしょう。

このような場合は、思い切ってお子さんから補聴器をプレゼントするのも1つの手段です。

「高いから申し訳ない」
と最初は断られるかもしれませんが、
「これからもずっと相談に乗ってほしい」
「交通事故に遭わないようにお守りにしてほしい」
など、伝え方を工夫すると、親御さんも補聴器を受け取りやすくなるでしょう。

難聴と認知症のニュースをきっかけにして、『将来の医療費や介護のことを考えたら、今のうちに補聴器で聞こえを守っておいた方が、結果的には家族みんなの負担が少なくなると思う』という伝え方をすると、“出費”ではなく“投資”として受け止めてもらいやすくなります。 

「補聴器を買う=自分が弱くなった証拠」と感じている方には、『補聴器は、難聴と認知症の両方からお父さん(お母さん)を守るためのものだよ」と、役割を丁寧に説明してあげることも大切です。

難聴と補聴器・最新研究から見える希望

1990年にQOL(Quality of Life:生活の質)に問題を感じている、194名の退役軍人を対象に行われた、補聴器の装用と認知機能低下を調べるランダム実験では、補聴器を装用したグループで①社会的・情緒的機能②コミュニケーション③認知④抑うつの各項目に改善が見られました。

(参考:小川 郁『認知症と加齢性難聴―認知症予防対策における補聴器の役割―

さらに、2023年に報告されたACHIEVE研究では、難聴のある高齢者が補聴器などによる介入を受けた場合、受けなかったグループと比べて認知機能低下の速度が抑えられたとされ、難聴と認知症の関係に対して「補聴器が予防に役立つ可能性」が改めて注目されています。

わたしたちが普段無意識に感じている、小鳥のささやきや風の音、他人の話し声でも脳は刺激を受け、活性化しています。 

したがって、補聴器で聴覚刺激を補うことが、認知症の予防に役立つと考えられるのです。

難聴と認知症の関係は、怖い話だけではありません。「早く気づいて補聴器やコミュニケーションの工夫で脳への刺激を取り戻せば、これからの生活を前向きに変えられる」という希望でもあります。

ご家族ができる具体的なステップ

難聴と認知症の関係を知ると、『何とかしなきゃ』という気持ちが強くなりますが、親御さんが補聴器を“嫌がる”ことも多く、現実には難しいと感じている方も多いはずです。 

最後に、ご家族が実践しやすいステップを整理します。

  1. まずは「聞こえ」の話から始める:「最近ちょっと聞こえづらそうだけど大丈夫?」ではなく、「私も聞き間違えることが増えてきて、一度一緒に耳をチェックしてもらおうと思っているんだ」と、自分も同じ立場だと伝える。
  2. 難聴と認知症の関係を“脅し”ではなく“安心材料”として伝える:「難聴が認知症の原因になるらしいから怖い」ではなく、「早めに難聴に気づいて補聴器を使うと、認知症のリスクを減らせる研究も出てきているみたいだよ」と前向きに話す。
  3. 補聴器専門店は“ついで”に行く:「病院に行こう」ではなく、「買い物のついでに、一度聞こえの相談だけしてみよう」「補聴器を見に行くだけだから」とハードルを下げる。
  4. 変化があったらしっかり言葉にして伝える:補聴器をつけた後に「今日はよく話が通じるね」「一緒にテレビを見られてうれしい」と、難聴が改善したことによる良い変化を、本人に分かるように伝える。

このようなステップを踏んで話をすると、無理強いすることなく補聴器にトライしてもらいやすくなります。

認知症と難聴|まとめ

認知症は、難聴によって深刻化しやすいことを紹介しました。

難聴は放っておくと改善が難しくなるので、早めの補聴器装用をおすすめします。

1990年の補聴器研究や、近年のACHIEVE研究などを通じて、難聴と認知症の関係は「放置するとリスクになる一方で、補聴器などで介入すれば良い方向に変えられる」ことが、少しずつ明らかになってきています。

聞こえに問題のある方の中には、難聴に自覚がない場合と、補聴器に対して心理的・経済的ハードルを抱えている場合があります。

それらの対策にはご家族の方が積極的に補聴器をすすめていく事が、一番です。

食事やお茶に出かけるついでに、補聴器を一緒に見てみる、一緒に補聴器相談の予約を取るなど、工夫をしながらご家族へ補聴器の利用をすすめてみましょう。

補聴器センターには聞こえの専門スタッフが常駐していますので、まずは聞こえのお悩みをお聞かせください。

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